「…なに?」

「似合ってるじゃん、それ」

「!」



直樹はそう言うと、少しはにかんだように笑う。


…拓海くんも、少しは直樹を見習え。


そう思いつつ、



「ありがとー!そんなこと言ってくれるの、直樹だけだよー」



そんな直樹の言葉に、拓海くんを少しでも振り向かせるべくあたしがわざと明るい声でそう言ったら、拓海くんがふいにイキナリあたしの右手首を掴んできた。



「!」



その手にあたしが少しビックリしていると、拓海くんが、掴んでいるその手を直樹に見せるようにして上に上げて言う。



「せっかくの褒め言葉、悪いけど」

「?」

「あんまコイツ褒めないで。調子乗るから、」

「!」



拓海くんはそう言うと、直樹や芽衣に背を向けて「行くぞ」と一足先に外に出た。



「わ、ちょ、待っ…!」



急に腕を引っ張られるから、その反動であたしは思わず前に倒れそうになる。

でもそれも何とか堪えると、目の前に広がる大きな海に出た。



…ってか、思わず普通に流しそうになったけど…


あんま褒めないで、って…何気酷くない?拓海クン。