妃由 side
その時、ようやく駅に芽衣がやって来た。
「ごめーん!」
「!」
その声にそこを向くと、芽衣は走ってこっちに向かってきて…
「走んなくていいよ」
あたしがそう言うと、芽衣が早歩きでやって来る。
そしてチラリと直樹の存在を確認すると、嬉しそうな顔をしてあたしに目で「ありがとう」と合図をした。
可愛いなぁもう。(あたしには劣るけどね)
「ごめん~、ちょっと寝坊した」
「大丈夫~拓海くんと直樹だって今来たばっかだよ」
「え、そうなの?」
芽衣はそう言って謝るけど、別に遅刻はしてないし。
それよりも4人揃ったから、あたし達は電車に乗って目的の別荘に向かった。
…と、その前に。
「拓海くん、」
「?」
あたしは芽衣と直樹の目を盗むと、そっと静かに拓海くんを呼びとめて言う。
忘れちゃいけない。
実は、まだ拓海くんには言ってないのだ。
今から海に行く、本当の目的を。
「あのね、まだ言ってなかったけど、芽衣は直樹のことが好きなの」