「いやだ、助けて!助けて、玖皎ぉ――っ!」
パリイイィィインッッ!!!
硝子より薄くて硬い何かが派手に割れる音がした。
途端、部屋を満たしていた不思議な光が消え、辺りの闇が濃くなる。
首を掴んでいる手がおののき、女が戸惑っているのを感じた。
そして、思葉の腹部にのしかかっていた重さが急になくなった。
次いで何かが棚に激しくぶつかるものすごい音。
思葉は軽く咳き込みながら身体を起こし、喉のあたりをさすって音のした方を見た。
暗くてはっきりとは見えないが、闇の中で誰かが女ともつれ合うようにして闘っている。
その人は得物を持っているらしく、外から届く僅かな光をはじいて時折煌めいた。
長い閃光のその形は、一振りの刀だった。
女は鋏で応戦しているのか、斬り結ぶのに似た音が鳴る。
だが闖入者を相手にするのは不利なようで、女の防戦一方になっているように思葉には見えた。
悔しげな低い唸りが耳をかすめる。
「ぐ……あぁあああっ!」
いきなり女がひどく耳障りな声音で叫んだ。
触手のように伸びた髪が、番台を引っこ抜いて闖入者めがけて投げつける。
すぐに反応した相手は横に飛んで回避した。