ドライヤーの温風を浴びたところで、ようやく悪寒がおさまり心が落ち着いた。
乾いた髪をとかして襟元で二つに軽く結わえる。
中学に通っていたときはいつもポニーテールかこの髪型だった。
この髪型にすると当時に戻ったような気分になる。
パーカーを羽織り、思葉は台所に出た。
いつもなら風呂上がりに野菜ジュースをコップ一杯飲むのだが、収まったとはいえさっき味わった恐怖もあってそんな気分になれない。
早く自分の部屋に戻って、玖皎と話したいと思った。
話す内容はどうでもいい。
ただ声が聴きたい。
玖皎の声が聴こえる身でよかったと本当に思った。
「……あ、鍵見とかなくちゃ」
階段に向かう前に、裏口の施錠を確認する。
だが、表通りの方はどうしても行きたくなかった。
あの気になる櫛があるから余計に怖い。
「別に、行かなくてもいいよね。
鍵閉めたはずだし、うん、閉めた閉めた」
そう声に出してみるが、言えば言うほど本当にそうだろうかと不安になってくる。
行くしかないかと思葉は振り返り、奥を見てぎくりとした。