「いや、実は昨日、あたし柳瀬店長と残業してたんだけど、」
「うんうん、」
「その帰り道で…」
(昨日の帰り道)
「絵里奈ちゃん、」
「…はい?」
店を出たところを独りで歩いていると、そこへ柳瀬店長が車の中から声をかけてきた。
何、と思って声がした方を見ると、柳瀬店長が少し慌てた様子で言う。
「絵里奈ちゃんって、鏡子ちゃんが住んでる部屋番わかる?」
「え、」
「お願い、すぐ教えて!」
「……602号室ですけど」
「ありがとう!」
柳瀬店長はそう言うと、すぐに車を走らせてその場を後にした。
「…ってことがあったの、」
そしてあたしに昨日の話をした絵里奈はそう言うと、
「だから、部屋に行くっていうなら付き合ってんのかなーと思って 」
そう言って、首を横に傾けてあたしを見る。
…そ、そういうことか…。
絵里奈のその言葉に内心少し安心をしたあたしは、すぐに絵里奈に言った。
「や、やだなぁ。付き合ってるなら、マンションの部屋番くらい知ってるよ」
「…あ、そっか」