『倉庫で待ってる』




そんな言葉に、うん、と返事をして電話を切る。


ほんの少しだけ、心臓がぎゅっとなった。




──茜と両想いだってわかってから、今日まで。



お母さんとだいちゃんのことでいっぱいいっぱいな私に気を使って、茜はそれまでと変わらず接してくれて……いや、もしかしたら恥ずかしかっただけなのかも知れないけれど。



あの時──両想いになって、『俺のだから』って言ってくれて以来、それらしい素振りは全くなくて。


そして私も、そんな、変わらない私たちの関係に何も突っ込んだりしてこなかったけど。




今日の帰り、もう一度、言ってみようかな。




好きだよ、と。





全部が終わった今、ちゃんともう一度。



考えて、口角を上げる。




また、茜は照れるのかな、そんなことを考えて私は夜の道で息を漏らすように笑った。




見上げた、海みたいな夜空。


──何年ぶりか。


少しの恐怖心も抱かずに、ただ、綺麗だと。



──ただただ、綺麗だと。



それだけを思って空を見上げた、たぶん一生忘れないこの日。