おばさんのこと、私のこと、お母さんのこと、あんまり思い出せないくらいくだらないこと。
包み隠さず、全部、話せた。
だいちゃんに向かって振っていた手をおろす。
そして背を向けて歩き出した。
──やっと、私、“今”を歩ける。
やっと今日、“過去”が、ちゃんと“過去”になった。
もちろんあの過去が消えることはなくて。
私たちの過去は変わることなんかなくて。
あの時の思いも、気持ちも、拭い切ることはできなくて。
ずっとずっと今までと同じように、私の心にも頭にも残り続けるものだけれど。
ただ今なら前とは違く、過去を思い出せる。
過去として、思い出せる。
心地よくはないけれど、もう、息が乱れることはなかった。