…どうして。




私はこんなにも馬鹿なんだろう。



ちょっと踏みとどまって考えたら分かったことなのに。



でもそんなこと思ったって、彼が離れていくのは変わらない。


後悔しても───もう遅い。



海に吸い込まれていく彼の背に手を伸ばすけど、届かない。届かなかった。


空を切った手が、虚しく残される。




そして海は──バシャンと大きく音をたててだいちゃんを飲み込んだ。





『…えっ?』



後ろで、みんなの戸惑う声が聞こえた。



静かな、動揺。



それは少しして大きくなった。