「揖斐谷先生」
白衣を着た高身、白髪混じりの頭をした後ろ姿を追いかけた
「おお、どうした空野」
「この前お借りした気象学の本、ありがとうございました。」
「おーはいはい わざわざありがとね。意味分かんねーとこ無かった?」
銀縁眼鏡の奥の優しい瞳が、くしゃっと笑う。
本を手渡す瞬間、指先が軽く触れた。
「はいっ....大丈夫です。本当にありがとうございました。」
ふわふわと手を振って去っていく後ろ姿を見つめ、
ふぅ、とため息をついた。
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