♪〜♪〜♪〈雛叶〉


〈もしもし〉
「なにー?お姉ちゃん」
〈ごめん、今から来てくれない?〉
「えぇー、今?」
〈本当悪いけど…〉


「ごめん、涼、凛ちゃん。先帰ってて」
手を合わせてごめんって言ってくる




「ん。わかった」
だって姉ちゃんからだろ…


「あんまり遅くならないでね」

「わかってるー」
そう言って走って行ってしまった

「凛香。ちょっと行きたい場所がある」

「なーに?わかった」
凛香は不思議そうだった


俺から誘うってないもんな…











向かった場所はあの公園








「懐かしい〜、ここら辺前住んでたん
だ〜」
やっぱり…凛香なのか?

俺は前に会った香凛じゃないかと思った




「なぁ、ここ。覚えてないか?」
ブランコに座って言った

確信があったわけじゃない

けど、凛香は……


「覚えてるよ、涼くん。香凛でしょ?」


そう言った




覚えていたことと、本当だったことに驚いた


「じゃあ、な、なんで、出会ったときに
言ってくれなかったんだ!」
俺はつい、動揺して声を荒げてしまった


「涼、ごめん…」
凛香を驚かしてしまった…





「ごめん。でも…「だって!忘れてると
ずっと思ってた!」

凛香は急に俺の言葉を遮った


たしかに、最近思い出したばっかりだった


「「香凛」」

あの子の名前
夜遅いのに1人で公園にいた子


俺と同い年だったのに
なんだか寂しそうな目をしてたこと





「あの時は、涼が好きだった。私は…
少し経ったときに思い出したけど


涼は気づかなかったんだね



涼のこと気になったのも、前のことが
あったから。」






「答えてくれ。なんであの時、なんで居
なかったんだ、、」
俺は香凛が消えたときの話をした




居たら変わってたかもしれないのに


「外泊がバレて外に出られなくなって…
窓から見てたよ」
凛香は今にも泣きそうだった





泣かしたいわけでも、今更攻めたいわけでもないのに…


「あの時はごめんなさい






私たち

あと少し変わってたらよかったのに






好きだったよ。涼くん」


「今からじゃ、遅い…よな?」
俺は最後の希望を絞りだした


「昔には……戻れないよ」
悲しい時や無理をしてるときの凛香の
笑い方




その瞬間涙が落ちた





俺がもっと早く思い出してれば、


俺が忘れなかったら


どちらかが早く気づいていたら



「好き」



になってたはずなのに


少し変わったら俺になってたはずなのに

俺が別れるときに言えば、

再び会ったときに言えば、

この公園を早く思い出してれば





変わってたのに







「あの時はお前が初恋だった。


俺、凛香が来なくなってもあのブラン
コを見てた。

ずっと……今日は居るかなって



あの時、伝えればよかった…。」

後悔しても、もう変わらない


俺が言ったあの時の本音








「あの時、私も初恋だった。

涼は優しくって、思いついたら勝手に
行動してて…まっすぐだった」

凛香は優しく笑った






「あの時に戻りたいよ…」

「…うん。でも、戻れない。」


時が経って変わった未来

受け入れなくちゃいけない


あの時は叶っていた事


今では夢になってしまった








「ごめん。ちょっとだけ、」
そう言うと凛香の肩を借りた

「うん。」
凛香はそれだけ言った


俺は少しだけ泣いた





最後にあの時と同じように
「ありがとう、香凛。」
「どーいたしまして、涼くん」









「帰るか!」
「うん」

俺たちは思い出の公園を後にした