〜番外編〜


「凛香ごめんね。今日も仕事なの」
若い頃のママ

「ママ、今日も遅いの?」


この頃は世間でお嬢様って言われる時

「ごめんね。ちゃんとご飯は食べてね」
遅いって意味は帰ってこないって意味



14歳のとき


私の楽しみだったこと

外に出てフラッとすること

「今日は公園〜」






「あの人なにやってんだろ。おい、周」

「なーにー」
2人とも塾帰りだった

「ほんとだー。女の子みたいだね」

「ちょっと行ってくる」

「ちょっと!涼!」





ブランコを漕いでいた


あの2人こっち見てるし
さすがにやばいかな…


と、いきなりこっちに走ってきた

なに?どーかしたの??


「あの!危ないですよ」
まだ大きい学ランを着た男の子


「あー、大丈夫。」
それを言うために?
優しい子なのか…




「涼、いきなり走り出さないで!」
はぁはぁと息を切らしてる

「君、名前は?」

「香凛。」
本名はまずいのでね!

「香凛ちゃん!何歳?」

「14」

「じゃあ僕らと同い年だねー!!」

「そっちの名前は?」

「俺は一ノ瀬 涼」
「僕は一ノ瀬 周」

双子らしい

「ねぇねぇ、家帰んないの?」

「ほおっておいて。」

「ダメだよ。危ないだろ」

「……。」

「僕達もう帰んなきゃならないしー
あ、うちくる?」

家に帰っても誰もいないのが嫌だった

今思えば限界だったんだろうな




「……うん。」

「じゃあ行くか」

ん。っと手を引っ張った涼

「おかーさんにはてきとーに言うか〜」
能天気な子だな



「涼!周!遅かったわねー
あれ?ダメじゃない!女の子連れてき
て!」

まずは怒られた

「おかーさん、この子一晩だけ!」
「香凛ちゃんって言うんだけど…」
お願いっと頼む2人


やっぱり困るよね


「迷惑かけてすみません。帰ります」
ここに居たくなくてそう言った

「こら!帰るにしても危ないでしょ
明日にはちゃんと家に帰りなさいね」

「おかーさん?ありがとー!!」

「おかーさんごめんなさい」


「布団用意するから待っててー
周、涼着替えなさい」

「はぁーい」


着替えてきた周くんと涼くん

「香凛ちゃんだっけ?食べる?」


そーいえば何も食べずに家を出たんだ

「すみません……」

「いーの!」
周くんと同じ笑い方をする
どことなく似てる



「いただきまーす」
周くんと涼くんが作った料理はおいしかった

ご飯、お味噌汁、コロッケ、サラダだった

「おいしい。」

「普通だよー」

「そーいえばどこに住んでるの?」

「周!聞いちゃダメだろ」

「いいよ。あの公園の近くだよ」
この頃はまだ笑えたんだ

「えー!あそこってお金持ちがたくさん住んでるよね?」

「うん。一応そーなるね」

「すごいな。でもだったらなんで?」

「あの家冷たくて嫌い」

「そっか…ごめん」

そのあとは他愛のない話で盛り上がった


「香凛ちゃん。ここで寝てね」
布団までだしてくれて嬉しかった

「ほんとにすみません」

「いいのよ、こっちは男ばっかでつまんないし」
っと笑っていた


その夜は楽しかったなぁ




ーーーー朝
「本当にありがとうございました」

「いえいえ、仲良くしてやってね
涼、周送りな!」

「じゃあね、香凛ちゃん」
おかーさんは笑顔で送ってくれた




「楽しかったね〜」

「ありがとう!周くん!涼くん!」

「別に。俺も楽しかったし」
ふいっと横を向いた涼くん

「照れないのー」
っと涼くんの顔を覗き込もうとしている周くん

「バカ、こっちみんな!」
耳まで赤いし。

「でもね、もうすぐ引越しちゃうんだ
ごめんね」

「そっか。」

「でも、まだこっちいるし。」

「香凛ちゃん、また公園通るから!」


ほんとは香凛じゃないよ。
罪悪感で胸が痛いや


「うん。」



あの後、ママに外泊がバレて外出禁止になった

窮屈な毎日



ーーー夜あの2人が見える


私の家からあの公園は見渡せる

あの時間。

ブランコの方を見ている涼くん



そこには居ないんだよ

ごめんね

いつかまた会えるといいな





今はもう通らなくなっちゃったけど

会えたら、今度こそ名前を言います



「凛香?どーしたんだ?」

「ううん。ごめん涼、周」