-煌 side-
「……アイツ、おっせぇな」
凛音のやつ、“ちょっとだけ”とか言いながらもう二十分は経ってんぞ。何やってんだ。
「凛音ちゃんに電話してみたら?」
壱も凛音の事が気になるのか、さっきから時計ばかり見ている。
「そうだな。してみるわ」
壱にそう言われて携帯をポケットから取り出したちょうどその時、車内に響いたのは聞き慣れた着信音。
画面に視線を落とせば、“彼方”の文字が映っていて。
……チッ、タイミング悪ぃ。
舌打ちしながら受話ボタンをスライドした。
「何だ」
『今そこにりっちゃん居る!?』
「は?居ねぇけど」
慌てている彼方に何故か胸騒ぎがして。
「ちょっと待て」
十夜達にも聞こえるようにスピーカーホンにして音量を上げた。
「で、何だ?」
『今溜まり場の部屋にいるんだけど、テーブルの下に封筒が落ちてあったんだよ。
で、中開けたら便箋に【早く鳳皇から離れろ】って書いててさ。これって明らかりっちゃん宛てだよな?』
「………チッ」
後部座席から十夜の舌打ちが聞こえて、壱からも息を呑む声が聞こえた。
「……彼方。陽は?」
『多分、火皇のとこに向かってる』
「分かった。また何かあったら連絡する」
そう言って通話終了ボタンを押すと、背後でドアがの開く音がした。
「壱、行くぞ」
「うん」
……ったく、厄介な事になったな。
凛音、無事でいろよ。
-煌 side END-