だとしたら、これはあたしに対する“イジメ”だ。


中田側の人間かもしれないと思ってビビってたけど、イジメだったらもう怖くない。


十夜達に伝える必要もなくなった。


良かった、十夜達に言わなくて。



イジメの原因は十夜達だけど、そんなの十夜達には関係ないし。


それに、十夜達と一緒にいてあの女の子達に文句を言われる筋合いなんてないから。


売られた喧嘩は絶対に買う。


今、中田の事で迷惑かけているのに、こんな馬鹿馬鹿しいイジメの事で迷惑かけるなんて絶対嫌だ。


自分の事は自分で片付ける。


イジメとかする奴になんて絶対に負けない。










「───東條さん?」


ちょうど体育館の半分ぐらいまで来た時、背後から誰かに呼ばれた。


振り返ってみれば、



「矢、野くん?」



そこには何故か体育館にいるはずの矢野くんがいて。



「東條さん、びしょ濡れじゃん!どうしたの!?」



ずぶ濡れのあたしを見て、慌てて駆け寄ってきた。



「あー、更衣室の前の水溜まりでこけちゃったの!」



さすがに突き飛ばされましたとは言えなくて、「あはは」と苦笑して誤魔化す。