ある程度拭き終えると、後は保健室でどうにかしようと思い、保健室のある二年生の校舎へと歩き出した。
歩いていると、混乱していた頭もようやく平静さを取り戻していき、それと同時にさっきの出来事が脳内に浮かび上がってきた。
──あの時。
誰かに突き飛ばされる前、
『十夜君達から離れてよ』
確かに女の子の声が聞こえた。
それに、声は一人だったけど、走り去っていった足音は複数だった。
言われた内容から推測して、多分あの女の子達は十夜達のファンだ。
だって、“十夜達から離れてよ”ってそういう事でしょ?
いつかは分からないけど、きっと、あたしと十夜達が一緒にいる所を見たんだと思う。
それに腹を立てた女の子達があたしに“離れろ”と警告してきた。
……って、ん?離れろ?
“離れろ”?
脳裏に浮かんだのは、“鳳皇から離れろ”という、机に入っていた手紙の内容。
──もしかして。
ううん、間違いない。
あの手紙もさっきの女の子達が入れたんだ。
だって、手紙の内容と言われた言葉が似すぎてるから。
疑う要素が重なりすぎて、どう考えても同一人物としか考えられない。
──もしかして、あたしを階段から落としたのも、あの女の子達の仕業?
思い返せば、掴まれた手は女の子っぽかったような気がする。