グラリと右に傾いていく身体。
それが分かっているのに、足場が悪くて踏ん張る事が出来ない。
倒れていく身体にどうする事も出来なくて。
「───っ、」
次の瞬間には冷たい水飛沫が身体全体にかかっていた。
「行こ」
「……っ」
声と共に聞こえたのはいくつもの足音。
……誰?
突き飛ばした人を確かめようと顔を上げたけど、その時にはもう誰もいなくて。
自分一人だけが水溜りの中に倒れていた。
「……っ、いた、」
……何、これ。
濁った雨水が身体にまとわりついて気持ち悪い。
意味が、分からないんですけど。
何でこんな………って、そんな事より先に立ち上がらなきゃ。
いつまでも水溜まりの中にいる訳にはいかない。
「……ったぁー」
踏ん張った瞬間、右肩に走った激痛。
よりによって怪我している右側を打ちつけたらしく、痛みが半端ない。
……最悪。同じところ二回も打ったし。
っていうか、何であたしがこんな目に合わなきゃいけないの?
ホント意味分かんないんですけど。
痛みに耐えながら何とか水溜まりの中から脱出し、目の前に落ちている体操服袋を拾い上げる。
袋の中からさっき使ったばっかりのタオルを取り出して、ずぶ濡れの身体を少しずつ拭いていく。