「──痛くないか?」

「う、うん、大丈夫」



痛くはないけど、なんか……凄くドキドキする。


頭を撫でられるのって身近な人にしかして貰った事がないから妙に気恥ずかしい……。


っていうか、こんなに優しいのって反則だよ。調子、狂うじゃん。


──なんて思っていたら。



「お前、馬鹿だろ?」


「…………は?」


突然頭上に落ちてきた失礼発言。


……は?え?



「何回階段から落ちれば気が済むんだよ」

「なっ!」



小馬鹿にした様なその物言いにカッと熱くなる頬。


い、今あんなに優しかったのにいきなり説教!?意味分かんないんですけど!!



「お、落ちたのは仕方ないでしょ!」


落ちたんじゃなくて落とされたんだし!あたしは悪くないんだから!


っていうか、あたし怒られ損じゃない!?



「落ちない様に下見ろ」

「……っ」



そう言った十夜の声色はさっきより優しくて、また妙な羞恥心が心にまとわりつく。



な、何なのよもう。

馬鹿にしたり優しくなったり。ホント、気まぐれすぎて意味分かんない。


って。



「……へ?」



十夜の顔を直視出来なくて俯いていると、不意に左頬に感じた温もり。


それが十夜の指先だと気付いた時には既に遅く。



「……っ!ちょ、十夜!痛い!」



次の瞬間にはむぎゅっと頬を掴まれ、横に思いっきり引っ張られていた。