「凛音、十夜んとこまで送る」



近寄ってきて早々、何故かあたしに手を差し出してきた煌。


それを見て、ん?と首を傾げる。


十夜の所へ一緒に行ってくれるのは分かるけど、なんで煌と手を繋がなきゃいけないんだろう。



「バーカ。お前が一人で階段上がったらまた転がり落ちるだろうが」


「はぁ!?落ちないし!」


「落ちる落ちる。鳳皇で死者が出たらシャレになんねぇし。これから優しい優しい煌様が手引いてやるよ」


「ちょ……!?」



了承もしていないのに無理矢理手を引き、歩き出す煌。



「一人で歩けるってば!」

「………」

「ちょっと煌!」



何度呼びかけても前を歩く煌は素知らぬフリで。

面倒臭くなったあたしはもういいやと早々に諦めた。



部屋の前まで行くと煌はあたしの頭をクシャッと一撫でし、「ゆっくり休めよ」と言って彼方達の元へと戻って行った。


……何なのよ。急に優しくなるとか反則だし。調子狂うじゃない。


分かってる。

煌が心配して手を引いてくれたって事ぐらい。


なんだかんだで優しいとこあるんだよね、煌って。


階段を下りていく煌の背中に、心の中で「ありがと」と小さくお礼を言った。