「あ、陽、大丈夫だよ。階段から落ちて脳震盪になっただけだから」
あまりの怖さにタジタジになりながらもそう説明すると、陽は強張った顔をフニャリと緩め、「びっくりさせんなよ~」と安堵の溜め息を吐き出しながらその場に座り込んだ。
「心配かけてごめんね?」
「大きな怪我がないならいいよ。頭、痛い?」
うっ。
陽きゅんの上目遣いで凛音ちゃん即ダウン。
「ちょっと頭痛いかも」
あまりの可愛さに素直になっちゃったじゃないの。
「来る前車呼んどいたから帰って休んだ方がいいよ。保健室はずっと休ませてくれないから」
スクッと立ち上がった陽は早々とあたしの鞄を持ち、「ん」と言ってあたしに手を差し出してきた。
その仕種にきゅんとときめく。
陽きゅんが男の子見える……って、そうじゃなくて!
差し出された手にそっと右手を乗せてベッドから下りようとすれば、ズキッと全身に激痛が走った。
「……凛音?」
「ごめ、ちょっとバランス崩して……」
そう言ってる間にもズキズキと痛む身体。
その痛みに何とか耐えて陽に笑いかける。
これ以上心配させたくない。痛みぐらい我慢しなきゃ。
「陽、迎えってわざわざここまで来てくれるの?」
「あぁ。っていうかもう来てると思うけど」
「……ごめんね。そんな事までさせちゃって」
「気にすんな。ほら行くぞ!」
陽に手を引かれ、壱さんが待つ車へと向かった。