……なんで押されたんだろう?
そう心の中で呟いた時だった。
耳に入ってきたのは、聞き慣れた音。
これって、携帯のバイブ音?
という事は近くに鞄があるってこと?
鳴り続けている携帯を探そうとゆっくりと起き上がる。
すると、起き上がった瞬間身体中に走り抜けた鋭い痛み。
起き上がってやっと気付いた。
背中、腕、足、至る所が痛いということを。
い、痛すぎる……。
どうにか痛みに耐えながら、少しずつゆっくりと体を起こして鞄の行方を探す。
すると。
あ、あった。
鞄はベッドの足元に置いてあった。
布団を捲り、四つん這いでベッドの端へ寄っていく。
前のめりになると、手を伸ばし、鞄を掴んで中に手を突っ込んだ。
携帯を見つけた時にはもう止まっていたバイブ音。
慌てて着信履歴を確認すると……。
……えっ!?何、この着信履歴。
見てビックリ。履歴を開くと着信履歴は鳳皇幹部達の名前でびっしりと埋め尽くされていた。
……ちょっと、一体何なのよコレ。
そう思った時、不意に聞こえてきたバタバタバタと廊下を走る音。
その音は明らかに保険の先生の足音ではなく。
段々と近付いてくるその足音に身構えた時、ガラッとドアの開く音がした。
その足音は何故か止まる事はなく、此方へと近付いてきて、シャッとカーテンの開く音がした。
何回も聞こえるところを見ると、どうやら端のベッドからカーテンを引いているらしい。
四つん這いの格好のまま固まってしまったあたしはどうする事も出来ず、その人と対面。
「……っ、あっ!凛音さん、いたっ!」
って。
「千暁くん!?」
勢いよく開かれたカーテンから顔を覗かせたのは、なんと鳳皇メンバーである千暁くんだった。