────…
「ん……」
……此処、は?
視界一杯に広がっているのは、見覚えのない真っ白な天井。
おぼろげな意識のせいか、さっぱり状況が把握出来ていない。
……此処、どこ?
自分が今ベッドに横たわっているっていうのは何となく分かってる。
けれど、何がどうなって此処で寝ているのかはよく分かっていない。
「あら、起きたの?」
ぼぅと天井を見つめていると、シャッと引かれた真っ白なロングカーテン。
そこから姿を現したのは白衣を身に纏った女の人だった。
その人を見て此処がどこだか直ぐに分かった。
此処は“保健室”だったんだ。
「身体、痛くない?アナタさっき運ばれて来たのよ。軽い脳震盪と全身打撲。階段の下で倒れてたっ言ってたけど、足踏み外したの?」
「……え、あ……そう、です」
足を、踏み外した?
「危ないから気をつけてね。あ、先生ちょっと職員室に行ってくるからもうちょっと休んでなさい」
先生はふぅと一息ついた後、少し慌て気味に保健室から出て行った。
ビシャンと閉まった扉の音を見送って、ポツリ、零す。
「……足を踏み外した、か」
あたしは足を踏み外したんじゃない。
後ろから誰かに押されたんだ。
意識がハッキリしてきた今、頭に浮かぶのはあの時の背中の衝撃。
間違いない。
確かにあたしは誰かに押された。