「小五郎さん?どうしたの、いきなり。」
あたしは今もずっと走っている小五郎さんに話しかけた。
「戻ってから話しますから…今は追われてるのです。」
あたしは耳を澄ました。
あれ?
さっき聞いた足音が聞こえない。
聞こえるのはここにいる沢山の人間の話し声と足音だけ。
「小五郎さん、さっきの足音聞こえませんよ。」
そう言うと小五郎さんは足を止めた。
「はぁぁぁ…。よかったです。」
「よかったんならよかった。」
「すいません、いきなり。」
「ううん。いいよ。…それよりも傘、お願い。」
「あぁ!すみません。今さしますね。」
あたしをおろして傘を開けてくれた。
「ふぅ…。あ、目も隠してもらえる…?」
「えぇ。」
あたしの目を隠し終えた時変な話し方の声が聞こえた。
「おぉ!桂じゃ!おまん、どこにおったんぜよ?」
「龍馬さんですか。どこって、僕は隠れ家の方で仕事してましたよ。」
「ガハハ。そうか…お?そこにおるのは女じゃ!桂のコレかのぉ?」
「違いますよ!」
「小五郎さん、この人間誰?」
あたしは傘を差し顔を隠したまま声のする方に指を差した。
「この方は坂本龍馬ですよ。」
「変な名前…。」
「わしの名前を変というのはおまんが初めてじゃ!気に入ったぜよ!」
足音があたしに近づいてくる。