小五郎さんに巳甘という素敵な名前をつけてもらった。
巳甘…
なんだかくすぐったい感じ。
「巳甘さん。」
「何、小五郎さん。」
「僕と暮らしませんか?」
「へ?」
驚き過ぎて変な声が出てしまった。
「森の中に貴女を残せませんし…。」
「あたし今迄ずっと森で暮らしてたのですから遠慮するよ。はい、羽織りも返すね」
あたしは被っていた羽織を取って小五郎さんに渡した。
小五郎さんはそれを拒んであたしに被させ直した。
「駄目です。嫌でも巳甘さんを連れて行きますよ。」
あたしの瞳をまっすぐ見つめる小五郎さん。
そんな小五郎さんに根負けして了承した。
「そこまで言うなら小五郎さんと暮らすよ。」
「そうと決まったら…行きましょう!」
そう言って小五郎さんはあたしを横抱きにした。
「歩ける!」
「駄目です。貴女をほっといたら何処かに行ってしまいそうなんで。」
あたしは答えられなかった。
「それに巳甘さんの気が変わらないうちに行きましょう!」
小五郎さんはそう言うと歩き出した。
「小五郎さん…」
「なんですか?」
「何故あたしにそこまで、優しくするのですか?」
「…今は分からなくてもいいです。今度教えてあげますから。」
ちゅ
と額に暖かいものが当たった。
「え…?」
「クス。…では、しっかり捕まってて下さい。森抜けたら走りますから。」