ドン
「大丈夫ですか?」
不覚にも僕は人とぶつかってしまった。
僕は手を笠にやり、深く被り直した。
「う、うん。大丈夫…。」
どうやらぶつかったのは女性。
巳甘さんの声にとてもよく似てる…いや、巳甘さんと会ってないからと言って何でもかんでも巳甘さんにするのはよくない。
「そうですか。」
急いでるけどこのまま帰るのは失礼なので懐から金平糖を出した。
「お詫びに金平糖差し上げます。一粒食べますか?」
「…食べる。」
「僕少し前が見えないから手に一粒のせてあるので取って下さい。」
僕は一粒白い金平糖をのせた。
「あたし…目を隠し……目が見えないからごめんけどあたし取れないや。」
「目が見えない…?」
「うん。まぁね…。」
「そうですか。目が見えないのでしたら僕の顔隠す必要ないですね。」
僕は笠を外し女性を見た。
女性は黒い傘を差してて、赤い着物を着ていた。
「……この傘は。」
「あ、ごめんね。あたし日光弱くて…。傘差さないと駄目なんだ。」
日光が弱い…
似てる。
貴女は巳甘さんなのですか?
期待してもいいのですか?
くるくると傘を回す貴女の顔がチラチラ見える。
包帯で目を巻いてた。
僕は巳甘さんかもしれない女性を眺めてたらすぐ近くの甘味処から「みかさーん!」と男の人の声が聞こえた。
「あ、あたし待ってる人がいるの。ごめんけどその、金平糖は受け取れない。」