「一人では危ないですよ。僕も行きますよ。」
「桂はんは駄目や。あんさんは新撰組に顔知られるやろ?せやから、駄目や。」
「けど…」
「桂はんが巳甘を大切に想う気持ちは分かる。けど、今ここで捕まったら巳甘は悲しむで?」
うちがそう言ったら桂はんは何も言わんくなった。
うちは急いで座敷から出て探した。
「巳甘…何処におるんや?」
うちは島原の中を走り回った。
途中ここの芸妓に変な目で見られたけどそんなことお構いなしに走った。
「あっ。」
「……!」
途中巳甘と一緒にいるはずの幾松はんが他の男を連れて案内してた。
うちは立ち止まった。
向こうも止まった。
「幾松ちゃん?」
「すまへん。後で行きますから、お先にお座敷の方へ向こうとってもらえまへん?」
「分かった。待ってる。」
偶然通りかかった他の芸妓に「お客はんをお座敷にお願い。」と頼んでうちと幾松はんが残った。
「うちになんか用があるんやろ?お龍はん。」
「おおありや。巳甘は、何処にいるんや?」
「巳甘はんは途中ではぐれてしまってな他の芸妓に探しに行かせたんどすよ。」
そう言うとうちの横を通り過ぎようとする幾松はん。
嘘くさいな。
うちの勘やけど幾松はんは巳甘が何処かにいるのを知ってる。
「待ちな。」
「なんどす?」
「巳甘に酷いことしてみぃや、うちが幾松はんを一発殴ってやる。」