僕はさっきから巳甘とかいう女の声が頭から離れない。
『怖い…。独りは嫌…。』
『あたしを置いて行かないで。独りにしないでよ…』
悲しそうに言った女の声がまだ鮮明に聞こえる。
「総司いいのか?逃がして。」
僕の隣にいた斎藤一が言った。
「女がいたしね。」
「へぇー。総司が珍しいな。」
と平助。
「何が珍しい?」
「総司は女が相手側にいろうがお前は迷わず捕まえるだろ?」
「気が変わっただけだよ。それにまた、会えるかもしれないんだし。」
僕は桂小五郎に
『今はやめとくよ。…その代わり次会ったら容赦しないからね。』
そう言って僕たちは手を引いた。
「なんだなんだ?総司あの女に惚れたのか?」
「まぁそろそろ総司にも惚れた女くらいいてもいいんじゃないか?」
「永倉さんに原田さんも僕に…斬られたい?」
顔を真っ青にして全力で顔を横に振る2人。
「僕が惚れるわけない。」
「そうか?俺は声からして綺麗そうだったけどな。総司は顔見えたんだろ?どうだった?」
顔か…
いくら目のいい僕でも暗くてあまり見えなかったんだけどとても綺麗な顔立ちだった。
ドキドキ
思い出すと心臓がうるさい。
「どうした総司?顔が赤いぞ。」
「そんなわけないよ、一君。」
惚れるわけないよ…ね。
だってあの女は桂小五郎の恋仲。
人の恋仲に惚れるわけがない。