暗かった視界が、もっと暗くなった気がした。

私に話しかける省吾の声は近いのに、どこか遠くから呼ばれているようで。



ふと周りを見れば、青い芝生の庭が見える。



「ここは…」



その場所に立つと、まるで誰かを探しているような感覚に陥った。


恋しくて、切なくて。

会いたくて、逢いたくて。

涙ばかりが溢れてくる。



探してる愛しい影。

でも全然見つからなくて。



「どこに…いるの……」



痛っーーー

そして激しい頭痛と同時に、かすかに聞こえた誰かの声。



「僕は必ず、君を迎えに行くよ」



この声、誰だっけ……







―――省吾side―――




店の二階にあるこの窓からの景色は、圭吾が何年も見続けてきたものなんだろう。

オレに文句を言われるたびに、父さんや母さんから何か言われるたびに

ここへ来てたはずなんだ。



「祖父ちゃん…、オレこのままだと、本当に圭吾のこと消しちゃうかもしれないよ」


「……わかった。圭吾はすぐに海外に行かせよう」


「ねぇ、オレってワガママなのかな」


「いや…、省吾はいい子だよ」



幼い頃から何度も言われてきた。

省吾はいい子だ、偉い子だ。

でも何がどう良いのか…。



圭吾は勉強も、音楽も、運動だって工作だって。何もかもがオレよりできたのに。

誉められるのはいつもオレだった。

だから当然、オレのものを圭吾が手に入れられるなんて、あるわけがなかったんだ。

ずっと周りが、そうなるように仕向けてくれてたから。



今さらだけど、オレは今でも陽奈を必要としてるのか。

それさえもよくわからなくなってる。



ただ、圭吾に奪われるくらいなら、消えてくれた方がいいかもしれない。