私がその姿を見上げると、省吾はそこから視線をはずすように外を見た。



「もう、よく分からないよ…。どこまでが愛で、どこからがそうじゃないのか」


「省吾……、ゃっ!」



強く押されたと思った瞬間、目の前には私を見下ろす省吾が見える。

その表情は、切ないようで、でもどこかで怪しさを含んでて。



「今度は止めてあげられそうにない」


「ま、待って省吾!ここでは…」



この場所は、圭吾との大切な場所だと感じてた。

二人でそう決めたわけじゃないけど、ここだと不思議とお互い素直になれたんだ。

一緒にふざけて、一緒に泣いて。

想いを、重ね合って……。



制服のネクタイを緩める省吾が、どんどん涙でにじんでいく。

私はもうどうなってもいいから、圭吾だけは無事だということを教えてほしかった。



自分のシャツのボタンを外した省吾が、次は私の制服のリボンに手をかけて

私の震える手は、もう一方の省吾の手で押さえつけられて。



「声は出さないでね。本当に傷つけるのはイヤだから」



圭吾は?圭吾は…?


そう不安になるたび、また頭のどこかに刺激を感じてクラクラした。

そして下着が外れる感覚と同時に、気が遠くなるような目眩に襲われる。


薄れていく意識の中で、私を苦しめる省吾の言葉。



「圭吾がいなくなったらさ、陽奈は行くところなくなるでしょ。そしたらオレのところに来るしかないじゃん」


「っ、圭吾は……」


「それで祖父ちゃんに頼んだらさ、すぐに遠くへやってくれるって。……本当に消されてたらどうしようね」


「そんなっ…なん、で…」


「陽奈が自分で行かせたんだよ」


「……っ」




ドンと胸に押し当てられた空気のように、辛い思いがのしかかった。

何かが頭を締め付けて、吐き気がして。



私が…、圭吾を……



「もう帰って来ないかもしれないよ、寂しいけど。……陽奈?」