相変わらず圭吾の存在を迷惑そうに語る担任。
他の先生も同じような考えなのか、否定するどころか賛同しちゃってるし。
どうしてそこまで、批難されないといけないのかな。
たしかに学校を休んでばかりで、他校の子たちと関わってたこともあるのかもしれないけど
今はもう違うでしょ?
私はすれ違い様に担任を見上げた。
「お、なんだ?野崎。オレに用事でもあるのか?」
「別にないですけど。また米倉くんのこと話してたみたいだから」
「おいおい、お前は優秀なんだからあまり米倉を深追いするな。進路にも影響するぞ?」
そんな言葉で私が不機嫌そうな顔を見せると、今度はもう一人の先生が私に話をしてきた。
聞けばその先生は、一年の時に圭吾を担任してたみたい。
「何も米倉だけを悪く言ってるわけじゃない。見方を変えればアイツも可哀想な立場だってことだよ。理事長に振り回されてさ」
「理事長先生に?」
「元々両親は他の高校へ行かせるつもりだったのにこっちに呼んだのは理事長だ。そのくせ、いずれ海外に留学させるつもりだからってほとんど登校させることをしなかった。ピアノさえさせておけばいいってね」
「あれだろ?そもそも理事長は米倉を表に出させたくなかったんだ。それで目の届くとこに置いてさ。どんな秘密があるのかは知らないけど、さっさと海外に送ってしまいたかったのが、意外に早まったってことだろ」
「重荷が去ったと思ってるのは理事長の方ってことか?ははは…」
「ほんとに、理事長に見張られてるって神経を使う必要がなくなっただけでありがたいよ」
お互いの肩を叩き合いながら、担任たちは職員室に消えて行く。
残された私は、携帯にある圭吾の番号を見つめながら指を震わせた。
どういうこと……?
大丈夫なんだよね、圭吾。
変なことになってないよね。
ちゃんと手術を受けて
治ったら帰ってくるんでしょ?
集中できない授業中。
遠く見えない空に向かって想いを飛ばす。
私たちの知らないところで、何が起こってるのかもわからなくて。
ただ手の届かない距離に不安になりながら、祈ることだけを繰り返してた。