「僕も渉の事を友達だと思ってる。
けれど、わかりづらい事は嫌いなんだ。」
『…亜希ちゃんは悩んでるよ。
俺からしたら、簡単な悩みで悩んでる。』
湧き上がってくるこれは怒りなのか
それとも悲しみなのか。
振り払うように強い口調で答えた。
「じゃあどうにかしてやったらいい。」
『俺じゃないんだよ!』
渉が強く言い放つ。
『ジローちゃんしか亜希ちゃんの背中を押せないんだよ。』
背中を押せ?
もう僕は、亜希のそばにいられなくなるの?
渉は小さな声で続ける。
『それと、紛らわしいことして、ごめん。
亜希ちゃんとは何もない。
…俺がジローちゃんと仲が良いから。
ただそれだけ。』
話し終わると、ドアへ向かいノブに手をかけた。
『お大事に!
またな!ジローちゃん!』
振り返った渉は、いつものチャラくて明るい渉だった。