2人がそうやってバランスをとっている理由は私には分からないけれど、唯一私にも知っている事がある。

それは、シオンと約束をしたあの時。
あの時何故シオンが私と同じ病院に居たのか、私はその理由を知っている。

あの時シオンは私の存在を知らなくて、その約束をしたのをあの子だと思っている。

もし私がその事をシオンに教えたら、シオンはどうするのだろうか。


私は目の前に置かれたオレンジジュースのグラス中で、氷が溶けるのを眺めていた。

水滴で歪んで見える自分の顔が、何故かあの子に見えた気がして一瞬眉をひそめた。

水滴が流れ落ちる様が、まるで涙を流しているように見えるのは、きっと気のせいだと思った。


もし私が本当の事をシオンに話したら、シオンは壊れてしまうんじゃないかと、そんな事を思う。


だけれどシオンはもう子供じゃない。
だからきっともう気にもかけないのかもしれない。


だけれどほんの少しだけ、気になってしまう。
シオンがどうなってしまうのか、無性に気になってしまう。


だけれどそれを伝えるのは今じゃない。
今はまだやるべき事が沢山ある。


それにはシオンの協力が不可欠であることを、私は忘れては居ない。
シオンはあの子の為に、きっと私に手を貸すだろう。

だからまだ、あの日の出来事は私の胸の中だけにそっとしまっておこう。

あの日記と一緒に。