「喋りすぎだ。」


シオンは冷めた目で柴崎さんを睨んだ。
そんなシオンに柴崎さんは苦笑いを浮かべた。


シオンに睨まれてこれだけ余裕があるなんて、やっぱり柴崎さんはただ者ではないと思った。
一体何者なのかが気になって、私は素直にそう聞いた。



「柴崎さんは、何をしている方なのですか?」


そんな私の質問に、柴崎さんは一瞬シオンを伺うように視線を向けたけれど、直ぐに私と視線を合わせてこう言った。


「私は、紫音さんのお仕事のパートナーのようなものですよ。」


「……そうなんですか?」


「えぇ、紫音さんにはいつもお世話になっております。」


柴崎さんはそう言って、優しく微笑む。

何の仕事か聞きたかったけれど、だいたいの検討はついたし、シオンと同様に柴崎さんの当たり障りのない言葉に、きっと聞いてもはぐらかすだろうと思った。


「ふーん……。」


私はそう言って、またシオンに視線を戻した。

まだもう少しだけ色々と情報が欲しい所だったので、下手に深く聞いてもきっと教えて貰えないだろうと思ったので、あまり刺激しない方が良いと思った。


私はしばらく大人しくしておく事にした。
シオンに寄りかかり、甘えるようにピッタリとくっついて指先を絡めて遊ぶ。

シオンは私が隣に居れば何だかご機嫌が良いようで、自然と表情が柔らかくなる。
多分、他人が見ても分からないだろう変化だけれど、私にはそれが良く分かる。