「…………。」


柴崎さんの言葉に、シオンは無言だった。

理由は分からないけれど、恵令奈はシオンにとって必要な人材だったのかもしれないと思った。

さもなくば、柴崎さんはそんな咎めるような発言はしないだろう。


「後で俺が連絡入れとく。」


レオンが大した事でもないようにそう言った。

私は何だか申し訳無くなって、ワンピースの膝の部分を無意識に摘まんだり離したりした。
そんな私をフォローするかの様に、柴崎さんは大人らしく子供をあやすようにこう言った。


「恵令奈は紫音さんが大好きなんだよ。だからヤキモチだと思うよ。紫音さんが妹さんをとても大切にしているのは、噂になってるくらい有名だからね。」


「……そうなんですか?」


「そうだよ。だけど肝心の妹さんは今まで誰も会った事がなかったからね。僕らはこの前会ったけど、恵令奈は今日初めて見て驚いたんだよ、とても美人さんでね。」


柴崎さんはそう言って笑った。
自分の知らないところで、自分の噂話をされているのはあまり気分の良いもんじゃない。

それに、恵令奈と会ったのは2度目だったけれど、私は敢えてそれを言わなかった。
最初に会ったのは、私ではなかったからだ。


「シオンはあーちゃん命だからね♪」


レオンは酔っているのか、楽しそうにそんな事を言った。
私はどんな反応をするべきか困って、あの子みたいに曖昧に笑っておいた。