「ご、ごめんなさい。」


場の空気を壊してしまったのを、一瞬で感じた。
こんな場所で、柴崎さん達からしてみたら突然兄妹喧嘩を始めたようにしか見えないだろう。

何だかすごく恥ずかしくなって、私は謝罪して俯いた。

だけれどアルコールのせいか、ご機嫌なレオンが空気をよんで話始めてくれたお陰で何とかその場は丸く収まった。


「シオンはあーちゃんが可愛くて仕方ないからね。」

「そうみたいですね。仲が良くて羨ましい。」


柴崎さんがそう言って、私に向かって優しく微笑む。

私は申し訳無さと、自分の幼稚さに何だかとても虚しくなった。

それと同時に気づく。
シオンくらいの冷静さを常に意識しなければ、きっとシオンは私に全てを教えてくれることは無いだろうという事に。


場の空気が元に戻ったので、私は暫くおとなしく周りの会話に耳を傾けていた。

シオンは退屈そうに、グラス片手に何かを考えている様子だったけれど、私がどんなに考えてもシオンの思考を理解出来る事は決して無いだろう。

レオン達の会話は私には全く分からなかった。
何より色々な知らない名前が出てくるし、話の内容すら理解出来なかった。

誰が誰の子供を産んだとか、海外にあるカジノの話やら、私にとっては未知の世界の話ばかりで参加する気力さえなくなるような内容だった。


だけれど不意に恵令奈が私に話を振ってきた。