「それって、シオンが経営者って事?」


「あぁ、そうだ。」


「どうやって建てたの?」


「建てた?……買い取ったんだ。」


「誰から?」


「持ち主からに、決まってるだろ?」


「どうやって持ち主を調べたの?」


「……調べようと思えば何だって調べられる。」


「……そうなの?」


私がそう言うとシオンはまたあの悪魔みたいに片方の口角を上げて笑った。


「そうだ、だから俺に何かを隠しても無駄だ。"北川叶"と言う子供が親に売られていた事も、その相手もほとんど把握済みだ。」


シオンの囁くような言葉に私は大きく目を見開いた。
多分私達の会話は誰にも聞かれてないはずなのに、私は慌てて周りにいる人達に視線を走らせた。


柴崎さんは恵令奈と話をしていたし、レオンは刺青の男とさっきの女性と3人で何やら楽しそうに会話している。

私は何故シオンが突然そんな事を言い出したのか分からなかった。
強引にこの場にやって来た私への嫌みなのか、それとも何か別の意図があるのか私には検討がつかなかった。


「……お前は何が知りたいんだ?」


シャンパンのグラスを傾けながら、シオンは静かにそう言った。

やっぱりこの人は、全てを見透かしている。
私はその事実を目の当たりにして、なぜかとてつもない恐怖を感じた。

こんなに抜け目の無い人間がこの世界に本当に存在する事が、信じられなかった。