例え恵令奈がどんなにシオンを想っていても、シオンの心はあの子の物なのだ。
私はあの子と身体を共有しているだけの存在だから、勿論シオンは私にもなびくことはない。
だけれどシオンの一番大切な存在は、私の中で長い眠りについている。
だから私はシオンに保護されて当たり前だし、全くと言って良いほどに恵令奈にヤキモチすら妬かないけれど、構うのは実に楽しい。
だけれどその楽しさも一瞬で冷めた。
シオンは等々、堪えきれなくなったのか私の手を引っ張り自分の隣に座らせた。
「…大人しくしてろ。」
シオンはそう言って冷たい瞳で私を見つめた。
だけれど特に怒ってる声音ではなかったので、私は何だか急につまらなくなった。
暫く待つと、知らない男の人が飲み物を運んで来てくれた。
それはボトルに入って氷できちんと冷やされていた。
人数分のグラスと高そうなお酒に私は興味津々になったけれど、ドンっと音を立てて私の目の前にはチェリーの入ったオレンジジュースらしき物が置かれた。
それを置いたシオンを目を細めて睨んでみたけれど、どうやらシオンは私にお酒を飲ませてくれる気はなさそうだった。
「これ、なぁに?」
それでも私はめげずに、柴崎さんに話し掛けた。
きっと柴崎さんなら教えてくれるだろうと思った。