"妹"の部分を強調して私に笑顔を向けるこの女の顔に、ペンで落書き出来たらどんなに楽しいだろうか。
私はそんな事を考えて思わず心の中で笑ってしまった。
もう一人の女性はそんな私達に興味すらないのか、ぼーっとしていた。
「社会見学はもう充分だろ?」
レオンはそう言って私を見たけれど、私は視線を合わせなかった。
こんなに何かトラブルが起きそうな現場はそうそうないのだから、せめてもう少しお邪魔していたい気分だった。
「何か飲み物でも用意しましょうか?」
私の苦手な刺青の男がそう言って立ち上がった。
「お嬢さんは何を?」
男は見た目とは裏腹に、優しい声音でそう聞いてくれたので、私はちょっとだけ男に視線を向けた。
「ジュースありますか?」
私は丁寧にそう聞いた。
「あら?アルコールはお嫌い?」
恵令奈は隙さえあれば私を攻撃したくて仕方がないようだった。
「未成年なので。」
私はすかさずにっこりと笑顔でそう返した。
シオンとレオンはそんな私達を呆れた目で眺めていたけれど、もう特に何も言わなかった。
シオンがポケットからタバコを取り出すと、恵令奈がすかさず火をつけようとしたけれど、シオンは恵令奈から顔を逸らして自分で火をつけた。
恵令奈は酷く悲しそうな顔をしたけれど、私は同情心すらわかなかった。