突然話し掛けられたのに驚いたのか、その女は目を見開いて私を見つめた。
綺麗に縁取られたアイラインに、お人形みたいに長い睫毛が少しだけ羨ましく感じる。
ピッタリとしたニットを着ているので、その身体はとてもグラマーな事が一目で分かる。
女は何て答えて良いのか迷っている様子だった。
私は更に追い討ちを掛ける。
「とーっても、綺麗ですね。兄とお似合いですよ。」
私はそう言って、にっこり微笑みかけた。
その瞬間、レオンが小さく溜め息を吐いた。
多分、私に対する警告なんだろうと思った。
あの子はこの女とシオンの関係にヤキモチを妬いていたけれど、私の予想が正しければこの女はシオンの玩具みたいな物なんだろう。
だから恋人とは言えないし、私の発言に返答することすら出来ないのだ。
自分でも嫌な奴だとは思ったけれど、さっき睨まれたお礼はきちんとしなければ。
女の敵は女と言うくらい、女同士の争いほど醜いものはない。
でも先に睨んで来たのはこの女なのだから、売られた喧嘩をスルーするほど私は大人じゃなかった。
これで大人しくしてくれるなら、私も構う気すら失せるのに、女は何故か親しげに私に声を掛けてきた。
「貴女は確か妹さんよね?私は恵令奈(エレナ)と言います。宜しくね。」
そう言って微笑み掛けられたけれど、その瞳は笑っていなかった。