千香side3
なので、次の瞬間、私は彼に抱きついて、顔を思い切り近付けた。
これで彼女は私と彼がキスをしたと思うだろう。
運のいいことに、ここはラブホ街だ。
これで、彼女は彼には私と言う人がいると信じただろう。
その時、買い物袋を落とした、その子と目が合った。
私は、自信満々に微笑んでやった。
いきなり抱きついて顔を近付けてきた私に、蓮は「どうした?」ときいてきたので、「転びかけたの。ごめんね。」っと言った。
私は放心している彼女を彼にみせないように、車に乗り込んだ。
車を運転している蓮に彼女の名前を聞いてみた。
「ああ、白石みくるだよ。」
彼はその名前すらも慈しむ対象であるかのように微笑んだ。
ムカつく。彼は渡さない。
みくるちゃん。見てなさいよ。
あなたに、彼は渡さないわ。