「また、ね」



「ん」



彼が一瞬、やわらかく微笑んだのはきっと間違いじゃない。



彼が軽く私に会釈してから、こっちに背を向ける。



ぎゅ、と。



千夜ちゃんが私の手を握って、いまにも泣きそうな顔で私を見上げた。




「とりあえず、入りましょうか」



家の中にもどって、紅茶をいれる。



それからソファに腰掛けると、私の正面ではなく隣に座る千夜ちゃん。



「あのね、ママ、」



「ええ」



「っ、わたし……」



さっきまで、なんとか堪えていた瞳から大粒の涙かこぼれだす。



「やっぱり、雅のこと……

好きに、なっちゃったの……っ」