いざ町に降りて、市場を目指してみたものの
肝心の場所が分からない。
そのうえ、彼等の服装ときたらまるで
中世ヨーロッパのような衣装や
それこそファンタジーの世界に出てくる
ようなものばかりで、高校の制服を
みにつけている私たちは嫌でも浮いていた。
浮きまくっていた。
「おい、見ろよ」
そんな声を聞くこと数十回。
流石に不審に思われたらしく、私たちは
日が高く上る頃には立派な騎士達に
囲まれていた。
「我々は市民から通報を受けて参った
王国軍である!貴様ら何者であるか!」
鞘から抜いた大振りの剣を手にした
大柄な騎士が野太い声を張り上げる。
中央の噴水広場まで追い詰められた
私と椿は相手を睨めつけながら腰を
低めに落として、臨戦態勢をとった。
いくら私達が向こうで強かったとはいえ
それは魔法も何も存在しない世界の生身の
人間相手の話であって、こちらでもこの
力が通用する保証は全くもってどこにも
ありはしなかった。
「紫音、俺から離れないで。任せてくれ。」
椿は小声で私にそう言うと、やや大股で
騎士たちに歩み寄った。
「我々は怪しいものではありません。
この国に迷いこみ途方にくれていた
通りすがりの人間です」
芝居がかった口調で恭しくお辞儀をして
椿は悠然と微笑んだ。
相手が女であれば、それは容易く
まかり通っただろうが、現実はそう
うまくいくはずもない。
「後ろのものはお前の連れか」
「はい。私の妹分でございます」
騎士は帽子で頑なに顔、頭を隠す私が
きになったようだ。
全く勘が鋭い。
「その者、頭の帽子を取れ!」
「申し訳ございません。この者は強い日差しに
弱いのでこの帽子を取るわけには
いきません。」
「一瞬でよい。その帽子の下が普通の
人間であれば、貴様たちを信じてやろう」
まずい。
さすがの椿も言葉につまっている。
私の黒髪がこの世界で言う普通の人間なら
何ら問題はないが、ばれてしまうと何を
されるか分からない。
分からない以上は下手に動くこともできず
私は奥歯をきつく噛み締めた。
そんなとき、この空気を一瞬で崩すような
能天気な声が背後から投げ掛けられた。
「やぁ、ギルバート。お仕事ご苦労様」
オレンジ色の髪の青年が柔らかい笑みを
浮かべて私の真後ろに立っていた。
まずい。
再びそう感じ、身をかわそうとしたが
遅かったらしい。
青年が素早く振り抜いた剣はあっという間に
私の間合いに入り、キャスケットのつばを
ひっかけた。
肝心の場所が分からない。
そのうえ、彼等の服装ときたらまるで
中世ヨーロッパのような衣装や
それこそファンタジーの世界に出てくる
ようなものばかりで、高校の制服を
みにつけている私たちは嫌でも浮いていた。
浮きまくっていた。
「おい、見ろよ」
そんな声を聞くこと数十回。
流石に不審に思われたらしく、私たちは
日が高く上る頃には立派な騎士達に
囲まれていた。
「我々は市民から通報を受けて参った
王国軍である!貴様ら何者であるか!」
鞘から抜いた大振りの剣を手にした
大柄な騎士が野太い声を張り上げる。
中央の噴水広場まで追い詰められた
私と椿は相手を睨めつけながら腰を
低めに落として、臨戦態勢をとった。
いくら私達が向こうで強かったとはいえ
それは魔法も何も存在しない世界の生身の
人間相手の話であって、こちらでもこの
力が通用する保証は全くもってどこにも
ありはしなかった。
「紫音、俺から離れないで。任せてくれ。」
椿は小声で私にそう言うと、やや大股で
騎士たちに歩み寄った。
「我々は怪しいものではありません。
この国に迷いこみ途方にくれていた
通りすがりの人間です」
芝居がかった口調で恭しくお辞儀をして
椿は悠然と微笑んだ。
相手が女であれば、それは容易く
まかり通っただろうが、現実はそう
うまくいくはずもない。
「後ろのものはお前の連れか」
「はい。私の妹分でございます」
騎士は帽子で頑なに顔、頭を隠す私が
きになったようだ。
全く勘が鋭い。
「その者、頭の帽子を取れ!」
「申し訳ございません。この者は強い日差しに
弱いのでこの帽子を取るわけには
いきません。」
「一瞬でよい。その帽子の下が普通の
人間であれば、貴様たちを信じてやろう」
まずい。
さすがの椿も言葉につまっている。
私の黒髪がこの世界で言う普通の人間なら
何ら問題はないが、ばれてしまうと何を
されるか分からない。
分からない以上は下手に動くこともできず
私は奥歯をきつく噛み締めた。
そんなとき、この空気を一瞬で崩すような
能天気な声が背後から投げ掛けられた。
「やぁ、ギルバート。お仕事ご苦労様」
オレンジ色の髪の青年が柔らかい笑みを
浮かべて私の真後ろに立っていた。
まずい。
再びそう感じ、身をかわそうとしたが
遅かったらしい。
青年が素早く振り抜いた剣はあっという間に
私の間合いに入り、キャスケットのつばを
ひっかけた。