一時間ほど歩いたところで、
ギークは立ち止まって南を

「ここから先の一本道をいくと城下町でさァ」

「分かった」

「シオンさん!良かったらこの帽子、使ってくだせぇ」


山賊の一人が荷物のなかから、真っ黒な
キャスケットのような帽子を取り出した。

ただでさえ、変わった服装をしているのに
私の風貌は余計に目立つらしい。

気休めかもしれないが、これで髪を隠せと
言うことだろう。

面倒ごとは好かない。

ありがたく帽子を頂戴することにした。

髪をまとめて覆うように、目深に被る。



「どうだ?」

「うんー、大丈夫大丈夫」

「本当にお前は適当な奴だな」



へらへらと笑う椿にため息をついてから
山賊たちに向き直った。



「道案内ありがとう。おかげで助かった。
悪事はほどほどにしておけ。」

「へ、ヘェ!」

「じゃあねー」

「お達者で!」



そんな短い挨拶をして、山賊一団と別れ
二人で町を目指す。


ここまでの道中で得た情報は3つ。

1つ。この世界には七つの国があること。
まずはヘカシュタを盟主とする5つの国から
なる5国同盟。
それに加えて、さっき山賊の口からでた
エルフや天使なんかがいる精霊の国。
あとはいわゆる魔族の国。

2つ。この世界には魔法やら異能力やらが
存在する。これには一番驚いた。
完全にファンタジー世界に来てしまったと
認めざるを得ないではないか。

3つ。その他!
まぁ、おいおい分かってくることだろう。



「とりあえずは情報収集かねぇ」

「あぁ、お前の出番だ」

「任せなさーい。伊達に何百本もゲーム
こなしてないからな!」



存外ゲームオタクなこの友人はRPG、格闘
恋愛、などなど数々のジャンルのゲームを
こなしている。

多分、時間さえあればしている。



「市場でも行ってみるかねぇ」

「……あぁ」



完全にこいつゲーム感覚だ。