「この際お前が誰かはどうでもいい。
ここが何処かだけ教えろ。」

「おっさん、言っといた方が身のためだよ。
こいつマジで容赦ないからね。」


敵相手に本気で心配そうに言う椿を無視して
山賊は怯えたように私を見上げた。


「ど、どうか命だけは…!」

「一生ついていきますんで!!!」


何処までもテンプレートなやつらだ。

そのことを指摘すると媚びるような笑みを
浮かべながら

「変わり身の速さも山賊稼業には必要でして」

と、頭をかいた。


「まぁ、好きにしろ。何かおかしなことを
しようとしたら、その時は覚悟しておけ」


どのみち私たちの相手になる人間じゃないと
判断して、私は近くの丸太に腰をおろした。

椿も異論は無いらしく、私のすぐそばで
黙って立っている。


「へ、へぇ!!俺ァこの山賊団の大将で
ギークと申します!」

「小鳥遊紫音だ。紫音でいい」

「百瀬椿。よろしくー」


これが、私と椿のスタートだった。