「おい、紫音。起きてるか?」

「多分寝てる」

「こら」


目の前の男達の服装はまるで物語にでてくる
山賊そのものだった。

動物の毛皮や、ボロボロの布切れを身に付け
だらしのない笑みを顔に張り付けて私を値踏みするように眺めている。

全く不愉快なことこの上ない。

隣の椿はいつでも動けるよう体勢を整えて
私を気遣いながら立ち上がった。

何故こんなところにいるのか。
ここはどこなのか。
さっきまで一緒にいたはずの仲間は?


「誰だテメェら。ついでにここどこだ」

「俺が誰でもここが何処でもいいだろォ?
これからお前ら、売り飛ばされるん
だからよォ!!」


それを切っ掛けに、周囲の男たちが一斉に
襲いかかってきた。

刃物を持っている奴もいるものの
大半が木製の棍棒のようなものだった。


「あーぁ、俺らも安く見られたもんだなぁ
そんなに弱っちく見えるかねぇ」

「お前はともかく、私はそうは見えんだろうな」

「はは!確かに紫音は見た目詐欺だ」


余裕綽々。そんな会話をしながら私たちは
堂々彼らを迎え撃った。

自慢するわけではないけれど、私達は
不良間では割りと有名なグループだ。

たった六人でどれだけの人間を相手に
してきたかあまり覚えてはいないが
それなりに名前が知れるようになったと
いうことは、そういうことなんだろう。


「なんだコイツら!並の人間じゃねぇ!!」

「このアマ小さい癖に尋常じゃねぇ強さだ!」


あ??
小さい…?


「ありゃー、言っちゃった♡」


遠くで椿の声がしたが知ったこっちゃない。


「おい、お前」


手近にいた山賊を気絶させた上で武器を
奪い、ついさきほど私に向かって
「小さい」とほざいた男の背後にまわった。

恐怖に歪む男の顔を思いきり殴打すると
面白いほどその巨体は吹っ飛んだ。


「人には言っていいことと悪いことがある
よく覚えておくんだな。」


その一撃で、周囲の男達が情けない声を
あげて後ずさった。

全く、張り合いのないこと甚だしい。



「紫音ちゃーん、流石に普通のやつ相手に
それはねぇよー」

「うるさい、そんなこと言う間にはさっさと
そいつらを片付けろ」

「はいはい」


それから山賊たちと格闘すること数分。
体躯のわりに大したことはなく、全員を
伸すことに成功した。