「行こう愛菜。」


私の手を引っ張り
太陽の部屋を後にする。


振り向き太陽を見るけれど
さっきの場所から1ミリも動く事なく
黙っている。




私と川田は外へ出て
マンションの敷地内のベンチに腰掛けた。


「何で川田がここに?」


何も持ってない川田にそう聞くと
前を向いたまま答えた。


「華達に聞いた。

太陽とは仲良くてさ。
最近学校来てないのも知ってたし
ちょっと気になってさ。」


そうか…。
華と恵が言ってくれたんだ。


「太陽と仲良かったんだ。」


「中学の時からな。
あいつ、本当はもっと暗かったんだ。
あいつの親は仕事ばっかで
全国飛び回っててさ。

いつも1人だったんだよ。」


そんなの全然知らなかった。


「高校に入ってよく笑うようになって
理由聞いたら好きな人ができたとかで。

でも俺、それって
母親にその人が似てるからだと
思ってんだよね。」


とケータイ電話を取り出し
1枚の写真を見せてくれた。


「これ、小さい時の太陽と
その横が母親。」


渡されたケータイを見る。

小さな男の子は満面の笑で
その笑顔は今も昔もかわらない。

その横にいた綺麗な女の人。
髪は短かったけど
愛子さんにそっくりだった。


「俺もびっくりしたよ。
最初にあの人に会ったとき。
本物じゃないかって思った。」