「愛菜にわかる?
好きな人がいなくなる気持ち。

好きな人に好きな人がいる気持ち。
それでも消えない好きって気持ち。」


耳元が熱い。
太陽の息が耳にかかる。


「は、離して…。」


太陽は離してくれなかった。


変わった彼の姿に
私はどうしたらいいかもわからなかった。


「愛菜にはわからない。
好きな人いないんだから。」


そうだよね。
私がもっと普通に人と接する事ができて
普通に人を好きになれていれば

太陽の気持ちも少しは
わかったのかもしれない。


「ごめん…。私にはわからない。」


抜け出そうとする事を諦め
私は俯きそう言った。


「でも、太陽には
笑っててほしい。

それじゃダメかな?」


と。


え?


唇が熱い。

さっき耳にかかった熱と同じだ。


太陽の目がすぐそばに見える。


ガチャっとドアが開く音がした。


「おい太陽!!」


私を太陽から引き離したのは
川田だった。


「何してんだよお前!?」


私を自分の体の後ろに隠すようにした彼は
太陽にそう言った。


「ー…。別に。」


本当に変わってしまった
太陽ー…。

前はあんな顔しなかった。