「いや...大学に入ってからは特に何も...」
下手に突っ込まれないように、何ない事にしておくのが賢明だ。
また一つ。
また一つと、嘘が増えていく。
いつもの事だから今さら何とも思わないけど。
「え?気になる人とか、好きな人もいないのか?」
「えー。そういう人なんていませんよ~」
おどけて笑う私に、けげんそうに顔を向ける先生。
「やっぱりお前、高校の時から変わったよな」
「先生それ、大学で会った時にも言ってましたよ」
女の子なんて、大学に入ったら変わりますよ~と私は言葉を続けた。
「いや、そうじゃなくて...。藍川、何かあったのなら話聞くぞ?」
「ありがとうございます。でも本当に何もないですから。特に困っている事もないですし」
終始ヘラヘラと笑っている私と、真剣な眼差しを向ける先生。
私は一刻も早くこの場からいなくなりたかった。