高校時代、よく美雪と一緒に保健室に行っていた。
特に用事があるわけじゃないけど、冷暖房が効くそこが好きだった。
女子トークに花を咲かせ、時には愚痴を吐き、ごくたまにだけれど牧原先生も私達の会話に入って来ていた。


「どうしてうちの大学に牧原先生が?」

「実はね、ここの大学の教授が僕の恩師でさ。その人に会いに来てたんだ」


先生は、いつもと変わらない笑顔で接してくれた。

「そうなんですね‥。じゃあ私はこれで


陸との約束を思い出し、私はこの場を去ろうとした。



「待って‥!」

ふいに掴まれた私の腕。

牧原先生を横切ろうとした瞬間、なぜかそれを引き止められてしまった。


「....え?..牧原先生?」


振り払う事も出来ずに呆然としていると、先生は少しけげんそうに聞いてきた。


「藍川..変わった?」


え...?
たった数分話しただけで、私の黒く汚れた過去を見透かされたみたいな気分。
そう思うとなぜだか急に怖くなった。


「高校の時のお前、そんなんじゃなかったよな?見た目とかじゃなくて..内面って言うか...もしかして何か..」


「な、なに言ってるんですか!?..わ、私はずっとこんな感じですけど....」


こんなにも醜くなった私なんて知られたくない。
気づかれたくない。
私は掴まれた腕を払いのけて逃げ出そうとした。


「...逃がさない。藍川、ちょっとドライブにでも行こう?」


疑問系で投げかけられた言葉なのに、私の答えを待つことなく先生は歩き出した。