side:アリス(スラファ)
私達は原作者の元に訪れていた。
怪我をしているイモムシ、遊びが過ぎてお痛した帽子屋、三日月ウサギ、眠りネズミは、別の拠点で安静にさせている。

私とハートの女王、公爵夫人、チェシャ猫は冒頭に記した通り、原作者の元に訪れていた。
何故戻ってきたのかって?
確かに、私達は漸く此処から逃げ出せたのにって話ね。

単純な事よ。単純過ぎて、きっと笑われてしまうわ。
「仲間」の為って言ったら、黒ウサギに大笑いされそう。「んな馬鹿な事抜かしてる暇があったら、手前ェが生き抜く事を考えやがれ」ってね。
まともに話した事はないけれど、彼ならそう言うに違いないわ。

いけない...こんな事を綴ってる暇なんか無かったわ。
だって私達は原作者の手の中に入り込んだんですもの。
戦力の無い私が気を抜いていては、真っ先に殺されてしまうわ。
殺されては駄目よ。白ウサギを連れ出せなくなってしまうもの。

果てしなく長い廊下を、私達4人は足音を消して移動している。
勿論、辺りに気を配って。
原作者は用心深いから、隠しカメラなんてザラなのよ。
本当心配症ね。本性はそうでもない癖に...。


「アリス。大丈夫かい?」

「其の台詞、ハートの女王に其のまま返す。」

「全く、可愛げの無い子だね。」


呆れ顔でハートの女王は私を見た。
こんな言い方をする私は、イモムシにでも似たのかもしれない。
だってイモムシは無愛想で、自分の気持ちも人には言わない。
出来るだけ自分で溜め込んで、自分で解決しようとする所...本当、似ちゃっのかな。


「イモムシに似たのかもね。」

「はっ、全くだよ。」


嫌味を吐き捨てるようにハートの女王は言った。


「顔立ちはハートの女王にそっくりよ。」

「ありがとう。公爵夫人。」


公爵夫人は何時も優しい。
『不思議の国』のメンバー全員に対して、分け隔てなく優しい。
過去が関係しているのだろうか。
美しさを求めた結果...なのかな。


「ボクも御主人と一緒~」


チェシャ猫も雰囲気に便乗して言う。
彼は少しネジが外れてるけど、


「五月蝿いね!!あんたら!」


ハートの女王は顔を赤くしてそう言った。
嗚呼そんな顔もするんだ。
そうこうしている間に、大きな扉の前に辿り着いた。



原作者の部屋だわ___



皆、それぞれに唾を飲み込んだ。
背筋に汗が伝う。
嗚呼、なんて不快なのだろうか。
嗚呼、なんて恐怖に彩られた空間なのだろうか。


嗚呼_____何故彼は、


_____私達を選んだのだろうか。