無駄な事をして終わったな。
もっとよく考えてから体力を使うべきだった...。
この場合1人で行動しない方が良いよな。
今はケビンの気配も感じない。眠っているのだろうか。最近、よく外に出てたからな。慣れない事はやはり体力を使うのか。
ムッシュは依然として元気だが...。ムッシュと何か話をした気がするが、何を話したっけ?まぁ、良いか...。


「...『Sicario』に戻った方が良いのか?
そしたら、ギフトが居るしあいつなら如何にか出来るだろ。つか、もうしているかもな。あいつ妙に仲間意識高いからな...。」


以前、ディーブが近くに住んでいた学校に通っているガキに悪戯された時、ギフトが目撃していて...其の後何をしたか知らないが、其のガキは家族諸共、カルラから出て行ったと言う。
其の話を聞いたギフトは、暫く腹を抱えて笑っていた。

取り敢えず『Sicario』に戻るか。
俺の足りない頭でどうこう考えるより、余程良い提案があるだろう。
ムカつくけど特にギフトは、思いがけない提案をするからな。
敵に回したく無いものだ。まぁそんな事は絶対無いがな。


「よし、取り敢えず帰るか...。」


俺は1人にも関わらず、そう意気込むと廃墟の出口へと向かった。
気に止めていなかったが、空が少しずつ明るくなっていっている。
夜明けか...、朝帰りと五月蝿く言われそうだな。
廃墟から出る前に俺は自身のナイフを、探しに行った。ナイフは俺にとって最も大事な物だ。

1番使いやすいと言うのもあるが、最初に習得した武器がナイフだから、愛用しているだけだが...。
ベラージュがナイフと銃は絶対覚えろって、五月蝿かったな、懐かしい。

ナイフは出口の近くに置いてあった、襤褸い錆びたバケツの中に、無造作に投げ入れられていた。
中から拾い上げてみたが、特に目立った損傷は無かった。
とは言え、もっと丁寧に扱ってもらいたいものだ。

安堵の息を漏らす。
ナイフをコートのポケットの中に入れると、バケツの中に入っていた白い紙切れが視界に入った。
ゴミかと思ったが、バケツの中に一緒に入っていた物としては、似つかわしくない。


「何だ...?」


好奇心で拾い上げてみると、其れは手紙の様な物だった。
子供が書いた字だ。子供ならば、アリスとか言ってたガキか...。


“イレギュラーな黒ウサギへ

白ウサギとの時間をありがとう。
黒ウサギと違って、とても楽しかった。
貴方には悪い事をしちゃったね。
でも、私達にもやりたい事があったの。
ずっと物語の基盤を歩み続けている事は、もう止めたいの。
私達は解放されたいの。黒ウサギに言っても仕方無いね。

P.S
私達は〝白ウサギ〟を取り戻し、“薬”からも逃れるわ。”


手紙の内容は以上だ。
一体何の事だ...しかも白ウサギって、ケビンに会ったって事か。マジか...。
つか、最後は如何言う意味だ。“白ウサギを取り戻す”だと...。
ケビンの事じゃなかったのかよ。
其れに“薬”って、意味解んねぇー。


「此れも一緒に持って帰るか。
ギフトなら何か解るかもしんねぇーし。」


俺が読んでも、何1つ解らない事はよく解った。
つか、何を思ってこんな手紙を書いたんだ。
助けて欲しいのか?殺しに掛かっておいて...そもそもやっている事が、滅茶苦茶なんだよ。

俺は馬鹿だから、こんな事やられても、こんな事書かれても、解らねぇーんだよ。
俺は「あ゙ぁ、もう!」と言いながら、頭を掻くと廃墟から出た。