顔を上げると同時に、見覚えのある顔が、広海さんの顔と一致した。
「あ・・・テレビに出てる人だ・・・!」
若松の彼女は、おっとり系の最近売れてきている人気女優さんだった。
テレビとかあまり見ないから、わからなかった。
「ちょっとはじめちゃん!有名人を全てテレビに出てる人で片付けるなんて、おかしいでしょ!
ミカちゃんもわからないからって、首を傾げない!
広海さんに失礼だろ!」
涙を拭いて、鼻をかんだ若松は、私たちを指差しながら怒った。
隣の広海さんは、これまた上品にクスクスと笑いながら、私たちを見た。
「さすが若松さんの初恋の人。
聞いてた通り、鈍くて、ちょっと変わった方ね」
「若松!変わってるってなに!
広海さんに、私をなんて教えたんだ!」
「ちょっと広海さん!
今そこで、そのこと言わないでよ!
あとはじめちゃんも、口調!今だけでも大人しくしなさい!」
いつまでたっても変わらない二人のやりとりを見て、帝はどこか嬉しそうに微笑んだ。
「新道さんが、笑っていらっしゃる・・・!」
カメラを持っていたチームの一人が、目を丸く見開き、驚いていた。